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T氏結婚式は親の人的財産を継承する場ですから、お呼ぴ漏れがあって不義理にならないよう、お父さんの知り合いだとか、お母さんの恩人だとか、できるだけたくさんの方にご案内を出し、出席していただく。 そうやって、一人でも多くの方をお呼びするべきだと、われわれホテル側はお客さまに説明しています。
招待客の人数を増やすことによって人的財産は増えますが、両家の負担はそんなに増えるものじゃありません。 N氏親しいと思っていたのに、もしも自分だけ声がかからなかったら、寂しい思いをしますよね。
T氏呼んでもらえば、その人との距離がぐっと近づくような気がするものです。 それに、結婚式のお呼ばれは、女性にとっては楽しみでもあると思うんです。
おしゃれができるし、いろんな人にも会えるわけですから。 N氏若い人たちは結婚式の二次会で知り合うことも多いらしいですしね。
T氏一声かけるだけで自分の味方が増えて、その大切な人たちに新たな交流の場を提供地方から情報発信するブライダルの明日一一大切にした~\1三つの心Jすることができる。 こんな素晴らしい機会は、ほかにないんじゃないでしょうか。

そういったことを、時間をかけてお客さまにお話しすると、皆さん納得してくださいます。 N氏お客さまに説明し、ご納得いただくというのは大切なことですね。
お客さまは結婚式についてご存じのようで実はご存じでないですから、例えば、ドレスを着てチャペルで式を挙げたいとか、ただ安ければいいとか、形から入ったり、うわべだけで考えてしまいがちです。 T氏われわれホテルも、お客さまから「どうしたらお金をかけずにできるか、どんな催しをしたらいいか」という相談をよく受けるのですが、形だけの演出や面白さばかりアドバイスしていては、いつまでたっても結婚式を挙げる大切さをわかっていただくことはできません。
N氏一番大切なのは気持ちだということを、はっきりと伝えなければいけませんね。 T氏例えば、自分で普段使うコップを買うなら、ディスカウントストアに行きます。
でも、本当に大事なお客さまにプレゼントするのに、安いものでいい、なんていう発想はないんじゃないでしょうか。 実は、物は一緒でも、正価で買った間違いのない物を贈るという気持ち、それが大切なんです。
N氏そもそも結婚式というのは、お世話になっている人たちに、これからもよろしくという気持ちを表す場ですからね。 そういうふうに考えると、会費制の結婚式というのはどうなんでしょうか。
式を挙げるだけのお金を持っていないとか、来る人たちにも負担をかけないで済むという理由で会費制にする人たちもいますが。 T氏北海道では会費制の結婚式が定着していますね。
お互い知らない者同士なら、それでもいいんです。 でも、このへんでは会費制というのは、あまり一般的ではないんですよ。
会費を1万円にしたとしても、例えば、親せきであれば、夫婦で5万1m万円はお包みになるでしょう。 N氏そうですね。

会費制と言っても、それだけというわけにはいかないんですよね。 はなむけという形で、別に持っていきますよね。
T氏相手に余計な気持ちの負担をかけたり、自分たちも持ち出しが多かったりで、あまりいいことはないんですよ。 ご祝儀制の場合、かかった費用だけを見れば全部で何百万円という負担になるように思うかもしれませんが、ご祝儀として包んでもらった分を差し引くと、ご両家の負担はそれほど大きなものではないんです。
N氏会費制のほうが、意外と親せきに対する失礼や、ご両家にかかる負担が多いんですね。 T氏費用の問題だけではありません。
この東北は、非常に人情味あふれる土地柄です。 すべては人の心から始まり、それが素晴らしい和となっていきます。
どんなに相手のことを気遣ってやったとしても、お披露目の席である結婚式を会費制でやるというのは、少なくともこの東北では通用しないのではないでしょうか。 N氏会費でいくら持ってきてくださいと提示するのは、私たちをこれぐらいでお祝いしてくださいと言っているようなものですからね。
「それはどうかな」ということですね。 T氏披露宴というのはご両家のお祝い事ですし、何世代にもわたって隣近所や親せきにお祝いをいただいているんですから、自分たちが費用の一切を負担して、全員を招待するという気持ちから入らないといけない。
それが「お招きする心」です。 そうすると、「両家だけに負担をかけては申し訳ない。
せめて自分たちの飲食分ぐらいは」と、お祝いを包んでくださる。 N氏だから、ご祝儀はのし袋に包まれていて、金額も明確じゃないんですね。

T氏金額が明確じゃないということは、お付き合いに応じて好きなだけ包んだらいいんですよ。 だけど、そのへんのル−ルはお互いにだいたいわかっています。
東北の場合、友人や同僚だったらだいたい2万円から、先輩だったら3万円くらい、親せきだったら5万1万円くらいが相場ですよと。 そういった費用というのは、いうときのための貯蓄として皆さん持っているものです。
N氏それを一生に一度のことに使うんですから、もったいないなんて言つてはいけませんね。 ご祝儀で3万円包んだとしても、これからの付き合いで得るものの大きさに比べれば、決して高いものではないんですね。
T氏自分の都合でお金を使うよりも、人間関係の粋の深い人のためにお金を使うことのほうが貴重だと思わなくてはいけません。 これが「祝う心」です。
それを受けて、「もてなす心」になるわけです。 お祝いでいただいた分ぐらいは、お客さまへの直接のおもてなしやお土産に充てる。
ホテルでは、今言った「お招きする心」「祝う心」「もてなす心」を忘れてはならないと、お客さまにきっちり説明しています。 本当の意味での心の豊かさとはN氏今後、少子化が進んでいけば、われわれ業界にも影響が出てくるだろうと懸念する声もありますが、ホテル側としてはどのようにお考えですか。
T氏少子化ということは、これからどんどん結婚式の組数が少なくなっていきます。 でも、それによってブライダル産業が衰退するとは思いません。
数が減るから単価が減るということではないんです。 子供の数が減っている今の時代に、ベビ−用品関連の産業はむしろ発展しているし、教育産業を見ても、一世帯当たりの所得に占める教育費の比率は倒的・2%で、一番高いんです。
N氏今までは、兄や姉に買ってあげたおもちゃのお下がりを弟や妹に使わせていたのに、子供が一人だけだから三つ買ってあげたいとか、子供が一人だから最高の教育を受けさせたいとか、考え方ががらっと変わってきているんですね。 T氏結婚式にも同じことが言えます。
数が少なくなるからこそ、一組一組しっかりした披露宴を行なおうと考えるわけです。 われわれは、これから結婚する方たちに、なぜこういう場が必要なのか、どうしてこれだけの人数をお呼びしなければならないかを説明し、理解していただかなければならないと思います。
N氏そして、本当に納得のいく立派な結婚式をしてあげるという気持ちで、お客さまにアドバイスしてあげなければなりません。 T氏結婚式というのは、心の底から幸福感に包まれる特別な瞬間なんです。

その瞬間に、どれだけ時間とお金をかけるか。 本当の意味での心の豊かさとは、そういうものだと私は思うんです。

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